本学博士課程前期課程2年の白井理沙子さん(小川ゼミ)が、2016年度日本基礎心理学会優秀発表賞を受賞しました。
この賞は、若手研究者の優れた研究計画の実施を支援するものです。
研究課題名:個人の道徳基盤が道徳違反に対する初期の知覚処理プロセスを決定するか
従来の研究では、道徳違反に関する判断は意識的な思考の存在が重要であるとされてきた(e.g., Piaget, 1932/1965; Kohlberg, 1969)。それに対しHaidt (2001) は、道徳的判断の主な源泉は思考ではなく自動的処理である情動であると主張し、異なる道徳違反に対して情動的な判断を行う複数の道徳基盤(ケア/危害、公正/欺瞞、忠誠/背信、権威/転覆、神聖/堕落)が存在すると主張した。そして、その道徳基盤のそれぞれの感度は個人ごとに異なっており、それによって、道徳違反によって引き起こされる情動の個人差が説明できると考えた。もしそうであるならば、どのような情報を処理するのかに関する初期の知覚処理過程においても何らかの個人差が存在し、それが最終的に下される道徳的判断に影響している可能性がある。本研究は、道徳的判断過程の基盤となる知覚処理の個人ごとの特性を実験心理学的な手法によって検討することで、道徳的判断のメカニズムの解明を目指す。