第3回CAPS研究会 12/14 竹島康博先生 (文京学院大学人間学部)・報告

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講演者: 竹島康博先生 (文京学院大学人間学部)
日 時: 2015年12月14日(月) 15:10~17:10 (終了時間は目安です)
場 所: 関西学院大学上ケ原キャンパス F号館305号教室

タイトル: 視聴覚統合処理にかかわる視覚刺激の諸特性

要旨:
周囲の環境を知覚する上で,人間は一つの感覚の情報だけでなく複数の感覚情報を統合して利用しています。このような知覚処理過程は多感覚統合と呼ばれ,特に視覚と聴覚の統合処理に焦点をあてた視聴覚統合について2000年代から盛んに研究が行われています。
本講演では,視聴覚情報の統合過程において主に視覚刺激のもつ特性が与える影響について調べた研究をご紹介します。視聴覚統合では視覚刺激と聴覚刺激の同期知覚が重要であることから,感覚刺激の処理速度を規定する空間周波数や複雑さが影響を与える要因となりうると考えられます。また,刺激に対して注意が向くことで視聴覚情報の統合が促進されることから,注意を誘引する情動刺激も統合処理に対して影響を与えることが予測されます。以上の視覚刺激特性の影響を,ダブルフラッシュ錯覚と呼ばれる現象を利用して検討を行った研究についてお話しします。研究の紹介を通して,異種感覚情報を統合する機能的意義や処理過程について考えてみたいと思います。

報告:
我々は日常生活において視覚、嗅覚、味覚、聴覚、平行感覚等、様々な刺激を外界から受けている。このような知覚に関する研究は各感覚を別々に検討してきていた。しかし、生体が日常行っているのは複数の感覚入力から知覚情報処理であり、近年知覚統合の処理過程に焦点を当てた研究が増加してきている。特に、知覚の視聴覚統合には視覚刺激と聴覚刺激の呈示タイミングが同期していることが重要であることが指摘されている。このような研究を受け、竹島先生は感覚統合の処理過程には呈示タイミングだけでなく、感覚刺激の処理速度を規定する空間周波数や複雑さが重要な可能性があると指摘され、視聴覚統合の処理過程に関する研究をご紹介頂いた。

視聴覚統合の検討を行うにあたり竹島先生はダブルフラッシュ錯覚のパラダイムを用いられた。ダブルフラッシュ錯覚は1回の視覚フラッシュと複数回の聴覚刺激を同時呈示すると、視覚フラッシュが複数回生じているように知覚される錯覚現象である。ただし、視覚刺激と聴覚刺激の呈示タイミングを同期しなければこの錯覚は生じないとされている。このパラダイムを用い、研究1では空間周波数を操作し聴覚刺激を同時呈示したところ、高空間周波数の視覚刺激と聴覚刺激の同時呈示はダブルフラッシュ錯覚を生じさせないことが明らかになった。すなわち、刺激の処理速度が視聴覚統合に重要である可能性が示唆された。また、研究2では複雑さを操作した視覚刺激を聴覚刺激と同時呈示したところ、複雑性の高い視覚刺激と聴覚刺激の同時呈示はダブルフラッシュ錯覚を生じさせなかった。こちらも研究1同様に刺激の処理速度が視聴覚統合に影響を及ぼしたことを示す結果となった。
以上の結果から、視覚処理の低次過程における処理速度を操作することによって視聴覚統合の時間窓が変容し、視聴覚相互作用の生起に影響を与えることを示された。

上記の研究だけでなくまだ論文化されていないデータや上手く結果がでなかった研究などもお話いただき、研究会ならではの密な研究交流が出来た。
短い時間ではあったが学生と教員含め活発な議論が行われた。

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参加者15名
(文責:伏田 幸平)