関西学院大学心理学研究室は、私学としては日本最古の心理学研究室の一つである。今田惠(1894-1970,
本学在職1922-1965)が1923年にドイツ・チンメルマン社より心理学実験機器一式を購入し、ハミル館2階の3室を実験室に当てたのをその始まりとする。1934年には、大学昇格と同時に法文学部に心理学専攻が置かれた。今日、心理学ブームというべき時代を迎えているが、第二次大戦前から心理学研究室をもっていた大学は、国公私立を含めてわずかに15に過ぎない。そして本学の心理学研究室はわが国の私学の中では最古の伝統をもち、2003年には80周年を迎えようとしている。
しかし誇りとするのは歴史的古さだけではない。むしろもっと誇りとすべきはそこに見られる思想的一貫性である。心理学に限らず日本の諸科学は、第二次大戦の終戦を契機にドイツ一辺倒からアメリカ一辺倒へと急変した。そのような中で本学の心理学研究室は1923年の創設時より、わが国では唯一、アメリカ機能主義心理学の流れの中にあり、そこから生まれた行動主義・新行動主義の思想的基盤を紹介し、行動主義の基礎をなした条件反射実験を始め、それ故に戦後アメリカ心理学がわが国に怒濤の如くに入って来たときに、何の思想的非連続性もなく、戦後の先陣を切って世間が注目する活溌な研究活動を始めることができた。組織でも人でも、この思想的一貫性は大切であり、誇りとするべきことだと思う。
心理学に限らず、多くの科学には基礎とその応用という二面性がある。したがってその教育課程では「基本重視と現実対応」の両面が大切である。しかし基礎は地味で応用は目に見える分だけ派手といえる。しかし基礎・基本を軽視したスポーツ選手の底が浅くすぐ行き詰ってしまうのと同じように、心理科学の場合もしっかりとした基礎あってこその応用である。「急がば回れ」のたとえのように、特に学部教育においてはしっかりと基本的なものの考え方を身につけてほしい。そして80年近い歴史を背景に基本を己の「血とし肉とする」ための条件が整っているのが関西学院大学心理学研究室である。
心理学研究室年表
名誉教授の紹介
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